本物件は敷地が南北に細長く、 北と南で高低差のある変形敷地であり、建築的与条件には、制限が多いものです。既存の住宅は昭和41年建設の築33年で、そのうち残したのは茶室を含む2間続きの趣ある和室です。
設計・施工的には解体した方が簡単でしたが、とても大切に住まれていたため壊してしまうのは勿体なく思い出のたくさん詰まった建物をなんとか残したい!という施主の方の気持ちに賛同し、父の思いを残そう!そこから出発しました。
“光と空気を感じ、風土に生き、風景に溶ける家”というテーマは常に念頭にありました。
日本の住宅は木造ですから仕方ないと言えば仕方ないのでしょうが、欧米に比べると、スクラップ&ビルトが多すぎること、また廃材を必要以上に出し、ダイオキシンなどをばらまく環境破壊の点からも常日頃から何もかも壊してすぐに新築することに疑問を感じていた私は、今回かなり古い部分でも残すことにしました。ただし、そのまま既存部分に梁をつなげる増築をしたのでは構造的に耐久性の点で心配でしたので、新しい構造部分は古い構造部分に緊結せずに古い部分を新しい構造体で覆いました。これを私は卵の殻で覆う住宅と考えました。
それによって現在の法規である準防火地域による防火構造の条件も満たすことが可能になり、かつ将来旧部分が朽ち果てた時も、新部分の形態を保ちつつ旧部分だけを取り除くことができるように考慮しました。
SDG2の観点からも最近ようやく古い家をリフォームして残すことが当たり前になりましたね。
味わいある古い家を残すことは法律的に困難なこともありますが、それをクリアする工夫をすれば、現代の生活にあった素敵な住まいを実現できますね。(この家はいくつかの賞をいただいています)
No.11 馬込の家(増築リフォーム)1999年竣工
敷地面積 193.60m2(58.56坪)
建築面積 94.51m2(28.58坪)
敷地面積 156.38m2(47.30坪)